第67章 秘密の宴
「信長様、今回は確かに朱里の言うとおり、頼まれたから連れてきたが…もし次にまた、朱里が泣くようなことがあれば、俺だって放ってはおきませんよ?」
「政宗、貴様っ…」
鋭い視線が混じり合い、無言の睨み合いが続く。
誰も間に入ることなどできない緊張感に、胸が苦しいぐらい締め付けられた。
やがて…信長はふぅっと溜めていた息を吐き出すと、スッと切先を下へと下げる。
そのまま流れるような所作で刀を鞘に収めると、もう一度、政宗を睨んだ。
「………次はない。貴様が朱里の涙を見ることなど、金輪際ないと思え。帰るぞ、朱里っ」
「…えっ、あっ…やっ…」
手を伸ばして私の手首を荒々しく掴み、ぐいっと自分の方へと引き寄せた信長様は、突然のことに体勢を崩してよろめく私の身体を悠々と抱きとめる。
「あ、あの、信長様……」
「黙れ。貴様への詮議は城へ戻ってからだ。
言い訳は一切聞くつもりはないから、覚悟しておくがいい」
それ以上の反論は許さない、というように熱を帯びた深紅の瞳に睨まれる。
冷たく突き放したような言葉とは反対に、信長様の瞳には、抑えきれない熱情が宿っていて、その炎はジリジリと私の心を焦がしていく。
緊張で強張っていた身体は、力が一気に抜けたようになり、私は自然と信長様に身を委ねていた。