第67章 秘密の宴
「朱里が今、どこにおるか、お知りになりたいのでしょう?
………政宗のところです。
いやはや、奥方様は大胆にも家出をなさったようで……」
「っ…政宗のところ、だと? それはまことか、光秀?」
「ど、どういうことだ、光秀っ!何で朱里が政宗のところに??
家出って……っていうか、何でお前がそんなこと知ってるんだっ?」
秀吉が、胸倉を掴まんばかりに光秀に詰め寄り、喚き散らすのが、逆に苛立ちを誘う。
「っ…煩いっ、秀吉、黙れっ」
「はっ、申し訳ございません…で、ですが御館様…」
俺と光秀を交互に見遣り、オロオロとする秀吉を無視して、光秀を睨め付ける。
「政宗はあの後、朱里を部屋へ送り届けたのではなかったのか?
何故、朱里が政宗のところにおる?」
「さて…私には分かりかねますが…」
「貴様、そのこと、何故、昨夜のうちに俺に言わなかった?わざと言わなかったのだろう?」
「滅相もない…御館様に隠し事など…」
ニヤニヤと意味深な笑みを浮かべる光秀をジロリと睨んでやりながらも、俺は、迷うことなくその場から立ち上がっていた。
「お、御館様っ、どちらへ?」
慌てたように自分も立ち上がろうとする秀吉の横を大股で通り過ぎる。
「迎えに行く。ついて来るでない」
秀吉の焦ったような声を背に聞きながら、俺はもう階下へと続く階段を降り始めていた。
心の内はひどく乱れていた。
政宗のところにいるだと?
他の男のところで一夜を過ごすなど…政宗であろうと誰であろうと許せん。
あやつ、一体、どういうつもりだ…