第67章 秘密の宴
その問いに笑って応える余裕は、今の私にはなかった。
「っ…毎回こんな…こんな宴を…?」
ぽつりと呟くように口から出たのは、そんな言葉だった。
「遊女どもが侍る宴は、男にとっては最良の息抜きだからな。普段真面目な男でも、酒の席で堂々と女と戯れられる。
男は皆、たまには羽目を外したいものだ」
光秀さんが淡々と答えるのが、また憎らしい。
「うっ…信長様も……?」
「……御館様とて健全な男だ、例外ではなかろう。
まぁ、酔って乱れるようなことはなさらないだろうがな…くくくっ」
「っ…ううぅー、もぅ、やだっ!光秀さんの意地悪っ、嫌いっ!」
「っ………」
「お、おいおい…どうした??」
いつも人前では落ち着いた奥方らしい振る舞いを崩さない朱里が、感情を露わにし、地団駄を踏まんばかりに憤っている様子に、光秀も政宗も驚いている。
「光秀っ、お前が苛めるからだぞっ!……落ち着けよ、朱里。
信長様はお前を裏切ったりしないって、なっ?」
「っ…政宗だって、綺麗な女の人達に囲まれたら嬉しいでしょ?
信長様だって…あんなに触られて…あぁ!逆に触ってるし…」
上座を見た瞬間、信長が、しなだれかかる女の身体を抱き寄せているのが見えてしまい、絶望感に打ちひしがれる。
(酷い…ひどい…もう、やだっ…)
頭が混乱して、足元がぐるぐると回っているような嫌な感じがする。
(気持ち悪い……)
足元が覚束なく、立って居られなくなって、ふらふらとその場に座りかけた、その時だった…………