第67章 秘密の宴
「おっ、お前、朱里じゃねえか、何してんだ、こんなとこで……ん?それ、宴の料理か?何でお前が、そんなもん運んでんだよ?」
中から出てきたのは、政宗だった。
「ま、政宗っ、あの、厨に人手が足りなくて…その、お手伝いを…」
おずおずと皿を差し出しながらも、開いた襖の隙間からチラッと見える中の様子が気になって仕方がなかった。
(すごく賑やかだな…人、いっぱい、いる…っ…女の人も……?)
「はっ、女中達の手伝いとは…お前らしいな。じゃあ、その皿は俺が受け取っとく……中、絶対入るなよ?」
政宗はニヤニヤと笑いながら、広間の中へ、チラリとわざとらしく流し目をしてみせる。
(政宗ってば……絶対入るな、なんて…私が気になってるの知ってて、揶揄ってるんだっ……)
「おやおや、これは、奥方様ではないか…こんなところで女中の真似事などなさって、どうなさったのだ?」
「っ…光秀さんっ…」
政宗と私の姿を目ざとく見つけた光秀さんが、宴の席を抜けて飄々とした様子で近づいてくる。
「今宵の宴、奥方様は出入り禁止のはずだが?」
「っ…うっ…出入り禁止って…そんな大袈裟な…っ…別に、どんな宴だろうと、私は気にしてませんから……」
「ほぅ…そうかそうか…では……少し覗いてみるといい」
「えっ?あ、あのっ…光秀さんっ?何を??」
言うや否や、光秀さんは私の腕を引っ張って、広間の中へと、ずんずんと歩き出したのだった。
その口元は、ニヤニヤと意地悪そうな笑みを湛えている。
「み、光秀さんっ??」
「光秀っ、待てっ、勝手なことするなって……」
政宗の慌てたような声を背に聞きながら、光秀さんに背中を押されて一歩、広間の中へと足を踏み入れた私が見たものは…………