第67章 秘密の宴
(忙しいのに、申し訳なかったな……それにしても、みんな本当に忙しそう…)
人手が足りていないのか、出来上がった料理もすぐに運ばれずに置かれたままになっている。
(ホカホカと美味しそうな湯気が上がってるのに……冷めちゃったら勿体ないな…)
そんなことを考えながらぼんやりしていると、お水を持って女中さんが戻ってきた。
「ごめんね、ありがとう…忙しいのに悪かったわね」
「とんでもございません、奥方様。今夜は随分と賑やかな宴のようで、酒も料理も引っ切りなしで…
政宗様も今日は基本、広間の方にいらっしゃるので人手が足りなくて……」
「そっか、政宗も参加してるんだね…」
話している間も、厨には次々と人が来る。
「おいっ、酒はまだか?」
「こっちは肴が足りないぞ、早くしてくれっ!」
「は、はいっ、ただ今…」
女中さんを始め、料理係の人も鍋を見たり、盛り付けをしたり、と忙しそうだ。
「あ、あの…私も手伝いますっ…盛り付けぐらいなら出来るし」
堪らず声を上げて手伝おうとするけれど、
「お、奥方様…滅相もないことっ、お辞め下さいませ、御館様に叱られてしまいます…」
皆は逆に恐縮するばかりで、断られてしまう。
「っ…でもっ…みんなだって忙しいのに………そうだ!じゃあ、私がお酒や料理を広間に運ぶわ……人手が足りないのでしょう?」
「いえ、でもっ…」
「大丈夫よ、じゃあ、早速、これ、持って行くわね」
「お、奥方様っ…」
厨の皆に心配そうに見守られながらも、置いたままになっていた大皿の料理を両手で持ち、広間へと運ぶことにする。
(宴には出るな、と言われたけど、女中さん達のお手伝いなら…いいわよね…)
大広間へと続く廊下を歩いていくと、近づくにつれて段々と賑やかに騒ぐ声が大きくなってくる。
ーきゃあっ うふふ ふふふっ
家臣の男性達の野太い声に混じって、女人の艶めかしい嬌声が聞こえてきて……思わず襖の前で足が止まってしまった。
(っ…やっぱり女の人を呼んであるんだわ……どうしよう)
このまま入っていいものかと、料理の皿を持ったまま、襖の前で逡巡していると、
ースパンっ!
いきなり内側から襖が開いて、中から人が出てきたので、びっくりして皿を取り落としそうになってしまった。
「っ…きゃっ……」