第67章 秘密の宴
突然のことで、吃驚して唇が僅かに開いた、その隙間から甘い団子が口の中へと押し込まれる。
蜜の絡んだ甘ったるい団子がつるんっと口内に入ってきて、口の中で甘さが広がる。
団子を口移しした後も、信長様の唇は離れてくれない。
チュッチュッと唇の上を啄むように口づけながら、時折、舌先で唇の端を突っ突いてくる。
「んっ…はぁ…んっ…」
団子を口の中に入れたままでは、どうすることもできず、されるがままに身を委ねていると、仕上げのように、ちゅうっと強く吸い付いた後、唇がゆっくりと離れていった。
「っ…はっ…んっ…もうっ、急に何するんですかっ?」
モグモグと団子を咀嚼しながら抗議の声を上げる私に信長様は……
「ふっ…貴様が食いたそうに唾を飲んで俺を見るから、食べさせてやったまでだ。
それとも、何だ?食いたいのは……団子ではなかったか?くくっ……」
「もぅ…意地悪ばっかり…」
恥ずかしくて頬が熱くなるけれど、こんな他愛ない甘い触れ合いすらも久しぶりで…口づけ一つで身体の奥がじんわりと熱を上げたのが分かる。
(っ…口づけだけじゃ、足りない…もっと、したい…)
抑えていた熱情が溢れ出し、はしたない欲が瞳を潤ませる。
「っ…んっ…信長さまっ、あのっ、今宵も…お戻りは遅くなられますか?」
(今夜は早く帰ってきて…抱いて欲しい、なんて…言えない…)
「っ…貴様っ…」
(何という顔をするのだ、まったく…)
潤んだ瞳で強請るように俺を見る朱里の心の内は、声に出さずとも丸分かりで……今すぐにでも押し倒したい衝動に駆られる。
だが、まだ政務が残っている。
これを全て片付ければ、年内の政務はひと通り終わる。
夜までに全て片付けねばならない………なぜなら、今宵は予定があるからだ。
「……朱里、すまん…今宵は宴があるのだ。家臣達を労う宴だ。今年は城移りから何から、家臣達には色々と苦労をかけたからな。年内最後の宴だ」
「まぁ、それは良いですねっ!皆、喜びますね、きっと」
「ん…今宵は遅くなるだろうから、貴様は先に休んでおれ」
「えっ?………あの、私も参加しちゃダメですか?」
(城の宴にはいつも参加してるのに……それが当たり前だと思ってたんだけど……)