第67章 秘密の宴
ぼんやりと信長様に見惚れていた私は、コトリと筆が置かれた音でハッと我に帰る。
「…待たせたな。今日の菓子は……みたらし団子か」
お盆の上を覗き込み、チラッと皿の上のみたらし団子に視線を走らせて分かりやすく口元を緩める。
さっきまでの真剣な表情とは正反対の、菓子を見つけた子供のような無邪気なお顔をなさるのが、何だか無性に可愛い。
書き終えた書簡を横にやって、空いた文机の上にみたらし団子の皿とお茶を置いて向かい合う。
「信長様、どうぞ」
「……………………」
(………っ…あれ?食べないの?いつもなら真っ先に甘味に手を伸ばされるのに……??)
信長は、目の前のみたらし団子をじっと見つめたまま動かない。
不審に思った朱里が声を掛けようとすると、それより早く、
「………ん」
信長は朱里に向かって軽く唇を突き出し、顎で団子の皿を指し示すようにする。
「……食わせろ」
「えっ?ええっ…や、なんで?」
「俺はまだまだ書簡を書かねばならん。団子で手が汚れると困る。
だから…貴様が食べさせろ」
(いやいや…汚れたら拭けばいいだけじゃ…手拭いもありますけど…)
「早くしろ、朱里」
あ〜ん、と今にも子供のように口を開けそうな勢いで急かされて、慌てて団子の串を手に取ると、トロリとした蜜が絡んだ団子は艶々としていて、見るからに美味しそうだ。
それを口元に持っていくと、パクリと開いた口が、串の先の団子を一つ齧り取る。
真っ白い歯が、琥珀色の蜜を纏った団子に齧り付く。
信長は、齧った拍子に唇にべったりと付いた蜜を、舌を出してペロッと舐め取っている。
その姿が妙に色っぽくて…見ているだけでドキドキする。
それはまるで、閨で私のを舐めて下さっている時の仕草みたいに見えてしまい、思わずゴクリと唾を飲み込んでしまっていた。
(うっ…ただ団子を齧っただけでこの色気…半端ない)
動揺を抑えきれない私にはお構いなしに、信長様はモグモグと美味しそうに団子を咀嚼していたが、生唾を飲んだ私に気が付いたらしく……
もう一つ団子を齧り取ると、素早く私の後頭部を引き寄せて……あっと思う間もなく唇を重ねた。
「んっ!?んんっ!」