第11章 束の間の息抜き
鷹狩りの日
蒼く澄んだ空は雲ひとつなく、どこまでも高く広がっていた。
馬で駆ける安土の武将たち一行の上を、信長様の愛鷹『羽黒』がゆったりと翔んでいる。
「信長様、羽黒もなんだか嬉しそうですね!」
「あぁ、久しぶりの鷹狩りゆえな。
貴様も馬に乗るのは久しぶりだろう?」
「そうですね。信長様に頂いたこの子にもなかなか遠出させる機会がなくて……今日は連れてきてくださって本当に嬉しいです!」
(……すまん、朱里。貴様をもっと自由にしてやりたいが……
今はそれは叶わぬ。
この俺の寵姫と知れれば、安土の外ではどのような危険な目に合うやも知れぬからな……)
「信長様?……どうかしましたか?」
一瞬憂いの色を帯びた表情を見せた信長様が気になって、遠慮がちに声をかけるが、すぐにいつもの信長様に戻っていて
「……いや、何でもない。……秀吉、まもなくか?」
「はっ、御館様、もうまもなく見えてくるかと」
すぐ後ろに控える秀吉さんが答える。
今日の鷹狩りは、秀吉さん、光秀さん、政宗、家康、三成くん、と安土の武将が久しぶりに全員揃った大掛かりなもの。
(お好きな鷹狩りで、少し息抜きできるといいんだけど)
信長様は相変わらずお忙しくて、自由になる時間もなかなかできないようだった。