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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第66章 信長の秘密


厩番の男は、平伏の姿勢は崩さぬまま、残念そうな顔をする。

(そうか…家臣の皆は、信長様のお怪我のことを知らないから、信長様が急に馬に乗られなくなったら心配するよね…。
でも厩には、毎日見に来ておられたんだ…知らなかったな…)

自分の知らない信長の姿を知る者がいるという事実が少し寂しく、心の内がざわざわとなる。


「馬達も、御館様に乗ってもらわんと物足りないようで……
この『鬼葦毛』などは、御館様しか乗せようとはせんのです」

厩番の男は一頭の馬のところへと歩いて行き、その首筋をトントンと撫でてやる。

『鬼葦毛』と呼ばれた灰色の毛色の立派な体躯の馬は、心地良さそうに撫でられながら、聡明そうな瞳を私の方へ向けてくる。

その栗色の瞳に吸い寄せられるかのように、私も馬の側へと近づいていった。


近くで見ると、見事に整えられた毛並みも美しく、堂々とした佇まいの馬だった。


「この子は、『鬼葦毛』というのですか?」

「はい、御館様の愛馬のなかでも、最も気に入りの馬でございます。元々は気性の荒い馬でしたが、御館様が自ら調教なされて、戦場へも何度もお供しております」

どこか誇らしげに語る様子に、厩番の者にとっても、この馬は自慢の馬なのだということが分かる。

「…あのっ…私も触ってもいいですか?」

「奥方様も馬がお好きですか?これは賢い馬で、元々の気性は荒いですが御館様が上手く躾けておられるので、暴れたりはしません。どうぞ、触れてやって下さいませ」


そっと手を伸ばし、首筋をトントンと撫でてやると、気持ちが良いのか、鼻先をスリスリと擦り寄せて来る。
気性が荒いというのが嘘のように、人懐っこい。


「ふふ…いい子ね、鬼葦毛。お前も早く、信長様と思いっきり野を駆けたいわね。
……はぁ…お前のご主人様は、どこに行かれたのかしらねぇ…」


こちらの言葉が分かっているかのように、鬼葦毛はぷるぷるっと鼻先を震わせるのだった。


しばらく馬を見せてもらった後、お礼を言って厩を出た私は、再び城内で信長様を探すことにした。

(う〜ん…本当にどこに行かれたんだろう??
御殿の中にはいらっしゃらないのかな……あとは、お庭とか……?)


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