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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第65章 逢瀬〜つま先まで愛して


その日の夜、湯浴みを終えた私が天主に行くと、先に湯浴みを済ませておられた信長様は、一人、御酒を嗜んでおられた。


「信長様、お注ぎします」

信長様をお待たせしてしまったのではないかと、急いでお傍に寄ると銚子を取り上げ、空いた盃に近づけるけれど、信長様の手が静かにそれを制する。

「信長様?」

「ん……酒はもうよい。朱里、膝を貸せ」

「あ……は、い…」

いつもと違い、歯切れ悪く返事を返した私に気付かなかった信長様は、膝の上にゴロンと頭を乗せて横になった。

「っ……あっ……」

膝にグッと重みが掛かった拍子に、正座をした足の指先の辺りに、ズキリと痛みが走り、思わず小さく声を上げてしまった。

「?朱里? どうした?」

「あ、い、いえ…何でもな、いっ…あっ…」

信長は朱里の返事を聞く前に身体を起こし、足先を押さえている朱里の手を捕らえる。

「やっ…離して、信長様っ…」

「ダメだ、見せよ」

「っ…きゃあっ! やっ、やだっ…」

強引に膝を崩させて、夜着の裾が乱れるのも構わずに、足先をぐいっと引っ張って自分の方へと向ける。

「っ…朱里っ、貴様、これはどうしたのだ?」

見れば、足の親指と人差し指の間の股の部分に血が滲んでいる。
ちょうど草履の鼻緒があたる部分だが、皮膚が酷く切れてしまっているようで、見るからに痛々しい。

(今日は一日、城下を歩き回っていたが、痛そうな素振りなど見せていなかったが……)

「あ…あの、これは…草履の鼻緒が擦れてしまったみたいで…」

「今日一日の町歩きでそんな風になったのか?いつもならあれぐらい平気だっただろう?」

「っ…それは…。光秀さんと京から大坂へ逃れる際に山越えをして…その時に痛めたところが、今日久しぶりにたくさん歩いたら傷が開いてしまったみたいで……もう治ったと思ってたんですけど…
後で軟膏を塗りますから、大丈夫です」

そう言って、足を引っ込めようとする朱里だが、信長は離そうとせず、痛々しい傷口を悩ましい目で見つめながら、足の甲をゆっくりと労るように撫でている。

「あ、あの、信長様? もう、離して……」

「……暫し待て。家康に薬を貰ってくる。彼奴、今宵は御殿に戻らず、城におるはずだ」

言うが早いか、朱里の足を優しく壊れ物を扱うように置くと、もう立ち上がって天主を出て行こうとしている。


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