第62章 嘘つきには甘い罰
そのまた次の日
政務の合間の休憩時間に、信長様と私は庭を見ながらお茶を飲んでいた。
「信長様、安土城のお庭も見事でしたけど、このお庭も凝った造りになってて素敵ですね!」
「ああ、安土と同じく、四季折々の花が途切れることなく楽しめるようになっている。貴様は花が好きだろう?」
「ふふ…ありがとうございます。信長様と一緒に見るとお花も余計に綺麗に見えます!」
「ふっ…愛らしいことを言う。
………時に、俺への罰は考えついたのか?
期限は今日までだぞ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、首を傾げて間近で顔を覗き込まれて、何だか恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
そんな私の顎を、信長様は指先でくいっと持ち上げる。
「っ………」
「目を逸らすでない…俺を見よ」
熱を帯びて微かに揺らぐ深紅の瞳に、真っ直ぐに見つめられて胸の鼓動が早まっていく。
「っ…あっ…信長様っ…」
信長様の端正な顔がゆっくりと近づいてきて……口づけられるっ、そう思って、ぎゅっと目蓋を閉じた時……
「ふふっ…」
「!?」(あれっ?)
ぱっと目を開けると、信長様は含み笑いをしながら私を見つめていて………
「ふっ…貴様は本当に可愛いな…口づけて欲しかったか?」
「んっ…もぅ、揶揄うなんて、ひどいです……」
「くくっ…では、早く俺に罰を下せ。
遠慮はいらん。これは、けじめだからな…」.
「は、はい…あのっ、一つ簡単なお仕置きなら思いついたんですけど……」
「ほう…では、言ってみろ」
「っ…あの、信長様はきっと嫌がると思うんですけど………」
(どうしよう…やっぱり緊張するな……信長様を『くすぐる』なんて)
「待て。気が変わった。貴様がそれほど緊張しているということは、よほど思いきった仕置きなのだろう。興を引かれた。あえて俺に中身を告げずにやってみろ」
「ええっ………!」
(どうしよう、本当にいいのかな……でも、考えてみたら『くすぐります』って予告するのも変な気がするし…)
ごくりと生唾を飲み込み、信長様を見据える。
「わかりました。あのっ、信長様、目を瞑って下さい…………それでは、失礼します!」
意を決して、目を瞑った信長様の首筋に手を伸ばしかけた、その時………