第62章 嘘つきには甘い罰
翌日、西国での謀叛を制圧した政宗の軍が、早くも凱旋したと聞いた私は、戦の労いの為に政宗の御殿を訪れたのだった。
「政宗っ、お帰りなさい!大丈夫?怪我とかしてない?」
「おう、このとおり擦り傷ひとつないぞ。この俺が怪我なんて、するわけないだろ?」
いつもと同じように、自信たっぷりに不敵に笑う政宗を見て、ほっと息を吐く。
「よかった…『兵の士気が落ちて苦戦してる』って文をくれたでしょ?心配してたんだよ」
その後すぐ、一緒に出陣していた光秀さんの軍が、信長様と合流する為に、政宗の軍から離れた、と聞いていた。
兵の数も士気も落ちてしまって、厳しい戦を強いられたんじゃないかと心配していたのだった。
「ああ、『信長様が亡くなった』っていう噂のせいで兵が動揺しちまって、当初はかなり苦戦を強いられたんだが……
信長様が自ら、兵達に向けて檄文を書かれたんだよ。
光秀がそれを兵達の前で読み上げたんだが…あの時の盛り上がりは凄かったな、鳥肌ものだった…やっぱり信長様はとんでもないお人だな」
「っ…信長様が兵達に檄文を…知らなかった…」
「あれで一気に士気が上がったからな…信長様は、文ひとつで戦の流れを変えられたんだ」
その時の興奮を思い出しているかのように、政宗の声は高揚していた。
兵達に向けて文を書かれるなんて……この日ノ本で、そんなことをしようとする人がいるだろうか。
信長様はやはり、常識では計れないお人だ。
「朱里も…よかったな、信長様がご無事で」
「……うん」
信長様への報告のため城へ行くという政宗と一緒に、私もお城へと戻ることにする。
道すがら、政宗にも『信長様へのお仕置き』の相談をしてみたのだけれど………
「信長様への仕置き、ねぇ…へぇ…面白いじゃねぇか」
「えっ、そう?(面白い?)
政宗なら、どんなのがいいと思う?」
「信長様が嫌がること、だろ?
そうだなぁ…ひと月、夜伽禁止、とか?」
ニヤニヤと笑う政宗は、心底楽しそうだ。
「や、そういう類のお仕置きじゃないってばっ!」
「何でだよ、信長様には、こういうのが一番堪えるだろ?
なんて言ったって、お前のこと毎晩抱いて…って痛っ!」
政宗の爆弾発言に、恥ずかしくて、思わず腕を叩いてしまう。
「もうっ!それ以上言わないで〜」
何で皆、そういう類のお仕置きを考えるんだろう……