第62章 嘘つきには甘い罰
「っ…何、やらしい想像してんの??
俺が言ってるのは、そういう意味じゃないってば。
閨での…身体の弱点…とか…そういうの、言ってないからっ!」
(ひぃ〜そんなはっきり言わないでぇ…)
「ご、ごめん、家康…私が悪かったです……」
飛び散ったお茶を手拭いで拭きながら、平身低頭、平謝りする。
「まぁ、あの人に弱点なんかないでしょ?
………あったら俺が教えてほしいぐらいだけど」
「…………………」
「………あるの?弱点…」
訝しそうな家康の視線を避けつつ、さっと立ち上がった私は、
「じ、じゃあね、家康。話、聞いてくれてありがとう。
私、用事思い出したから、もう行くね」
ひと息に言って、一目散に家康の部屋を出た。
「っ…ちょっと、朱里っ!」
家康の引き止める声が背後で聞こえてきたけれど……私は、聞こえないふりをして自室へと戻ったのだった。
(はぁ…危なかった…信長様の弱点なんて、口が裂けても言えないよ…そもそも弱点っていう程のものでもないのかもしれないし…)
信長様は……くすぐられるのが苦手みたいだ。
特に首筋が弱い……みたい。
以前、何かの拍子に無意識に首筋をくすぐってしまい、すごい剣幕で圧をかけられたことがある。
(少し前に、光秀さんに貰った媚薬を使った時にも、首筋に口づけたらすごく反応しておられたっけ…まぁ、あれは媚薬のせいで感じやすくなっておられたのかもしれないけど…)
「首筋をくすぐってみるお仕置き、かぁ…信長様は、どんな罰でも受ける、って仰ってたけど……許されるかなぁ、それ」
守りが固い信長様だから、そう簡単には出来なさそうだし、仮に出来たとしても、後が何だか恐ろしいことになりそうな予感がする。
(『第六天魔王は擽りに弱い』だなんて、きっと誰も想像もできないよね……)