第62章 嘘つきには甘い罰
「だが…貴様にはそれが嘘だと、俺の隠し事だと、感じたわけだな?」
「っ…は、はい…」
(信長様にとっては些細なことでも、貴方に関わることは私にとってはどんなことでも大きい……大丈夫だって言われても、やっぱり心配してしまう)
「……貴様に嘘を吐いた罪は重いな…よかろう、嘘を吐き、貴様を悲しませた罰を甘んじて受けようではないか。
朱里、俺に罰を下せ」
「……は? あ、あのっ…罰って…?信長様にお仕置きする、ってことですか??」
「そうだ、どんな罰でも構わん、貴様が考えよ。
期限は今日から三日以内だ。考えが纏まったら、俺に報告しろ。
………閨での仕置きでも構わんぞ?」
「やっ…もうっ!それは罰になりませんよ…」
罰を受ける、と神妙そうに仰る姿は真剣そのもので、何事にも妥協をしない信長様らしい。
けれど……意地悪そうに笑うその顔は、新しい悪戯を思いついた子供のようだった。
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「はぁ〜、信長様へのお仕置き、かぁ…どうしよう?」
その日の昼過ぎ、私は自室で一人、悶々と悩んでいた。
お仕置き…いつもは私がされる方で(主に閨で、だけど…)、いつも余裕たっぷりの信長様にお仕置きなんて、想像もつかない。
「お仕置き…お仕置き……ダメだ…やらしいことしか考えられないっ!」
信長様の妖艶な笑みと巧みな手管の数々が頭に浮かんでしまい、いやらしい妄想が溢れて止まない。
「…朱里、入ってもいいか?」
(この声…秀吉さん?)
信長様へのお仕置きに悶々と悩んでいると、襖の向こうから秀吉さんが遠慮がちに声をかけてきた。
「は、はい、どうぞ、秀吉さん」
「ああ…昨日は疲れただろう?籠城の差配や兵達の救護、よくやってくれたな。ありがとな」
「っ…そんなこと…家康や三成くんがいてくれたし…信長様の大切なもの、皆がいたから守れたんだよ。
秀吉さんこそ、信長様を守って下さって…ありがとうございました」
心からの感謝を込めて深々と頭を下げる朱里に、秀吉は慌てる。
「お、おい、頭上げてくれよな…お前に礼を言われる資格、俺にはないよ。俺は…御館様を守れてないんだから…」
「………怪我のこと?」
「っ…知ってたのかっ?」
「あっ、うん…信長様は、私には隠し通すおつもりだったみたいだけど…昨日の閨で、その…」
「あ、なるほど…」