第62章 嘘つきには甘い罰
翌朝、まだ薄明かりの早い時間に目を覚ました私は、暖かな布団の中で身動いだ。
(んっ…もう朝?私、あのまま眠っちゃったのか…)
肩までしっかり掛けられている布団の中の自身は、あられもない裸体のままで……昨夜の情事の名残が未だ身体中に残っていた。
(やっ…裸のまま寝ちゃうなんて…恥ずかしい)
隣を窺うと、信長様はまだ眠っておられるようで、穏やかな寝息が聞こえてくる。
やはり疲れておられるのだろうか、珍しく私の方が先に目覚めてしまったらしい。
その美しく整った寝顔に見惚れながらも、肩口に巻かれた痛々しい包帯が否応なく目に入る。
(信長様は軽い火傷だって仰ってたけど…怪我してるのに隠して戦って…信長様のお立場なら、そうせざるを得ないって解ってはいるけど……)
「………んっ…朱里?」
「…あっ…おはようございますっ、信長様」
「くっ…もう朝か…ふっ、貴様の方が早く目覚めるなど珍しいな…いつもなら起き上がれんくせに…昨夜は愛し方が足らなんだか?」
ニヤニヤと含み笑いを浮かべながら、背中から腰までをするりと撫でられる。
「っ…ひゃんっ!」
熱の残った身体は、信長様の手が触れただけで簡単に反応してしまい、かあっと熱くなる。
「ふっ…もう一度するか?」
「!?やっ…も…ダメです…無理…」
(昨夜あんなにシたのに、また朝から…なんて身体が保たないよ…信長様は…全然平気そうだけど…)
「あの…お怪我、大丈夫ですか?」
「ん?ああ…まだ気になるのか…大したことはない。火傷ゆえ、痕は多少残るやもしれんが…この身体、傷痕など数えきれんほど残っておるしな」
「っ…それでも…やっぱり教えて欲しかったです。
お怪我のこともですけど、本能寺でのことも……貴方のことは、些細なことでも全部知っていたいから」
「……なるほどな、俺にはそのつもりはなくとも…貴様には俺が嘘を吐いていたと、そう感じられたわけだな?」
「『嘘』というと、ちょっと大袈裟ですけど…隠し事は…嫌です」
「…………そうか…」
信長様は、何事か思案するように黙って目を閉じておられたが……
「嘘を吐いたつもりはなかった。
本能寺から脱出し、すぐに無事を伝えなかったのは戦略上の理由だった。
怪我のことは、もう治りかけているから改めて言う必要はないと思ったからだ」