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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第61章 試練の時


「家康っ、お前、言い過ぎだぞっ。御館様だってなぁ…」

「よい、秀吉」

家康の些か無礼な言いように、思わず気色ばむ秀吉を軽く制した信長だったが、それ以上言葉を発することはなかった。

皆が口を噤んでしまい、静寂が広間に広がった。

やがて……光秀さんの珍しく明るい声が、静寂をかき消すように広間に響く。

「此度の戦の勝利によって、御館様が生きておられた、という噂はまた、瞬く間に日ノ本全土に広まりましょう。
『織田信長は死の淵から舞い戻った。魔王は一度死んで、生き返った』と、少々大袈裟なぐらいの噂が広がるやもしれませんがな…くくっ」

「っ…光秀、お前、また…」

苦々しく顔を顰める秀吉さんを、見て見ぬふりをしながら光秀さんは広間からさっさと出ていってしまった。

それを合図に軍議は終了したようで……武将達は各々、信長様に挨拶をして広間を退出していった。



「…朱里、天主に戻るぞっ」

「っ…あっ、きゃあっ!」

皆がいなくなった広間で、信長様はいきなり私の手を引いて立ち上がらせると、さっと膝裏に手を入れて横抱きに抱き上げたのだった。

「やっ、やだ…下ろして信長様っ…」

急に抱き上げられて不安定に揺れる身体を支えようと、無意識に信長様の首にしがみついてしまい…なんだか私、言ってることとやってることが違うな、と更に慌ててしまう。

「天主まで抱いて行ってやる。今日一日、疲れたであろう?」

そう言うと、額にちゅっと口づけをひとつ落とす。

「っ…あっ…」

「大人しくしておれ」

耳元で甘く囁かれ、同時に耳朶にも軽く口づけられる。

唇が触れたところが、熱を持ったようにじわじわと熱くなってくるのが分かる。

恥ずかしくて胸元に顔を埋める私を、信長様が満足そうに見つめていたことを、この時俯いていた私は知らなかった。


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