第59章 新しき城〜魔王の欲しいもの
漆黒の夜空に無数の星々がチカチカと瞬く中、輝きを増した星が一筋の白い尾を引き流れ落ちる。
星々の間を縫うように、絶え間なく空から星が降る光景は、幻想的で美しく、いつまででも見ていられた。
欄干に手を付いて身を乗り出さんばかりにして空を眺める私を、後ろから抱き止めるようにして信長様の身体が背中に重なる。
「そんなに熱心に見られては、星も溶けてしまうぞ?」
耳元で甘く囁かれて、頭の奥にジンっとした痺れが走る。
「っ…んっ…やっ…だって…ほんとに綺麗っ…なんだもの…」
「……降る星も綺麗だが……それに見惚れる貴様の顔は、星よりももっと美しい。
朱里、貴様となら……俺はこのままどこまででも堕ちて構わん」
「っ…あっ…んんっ!」
耳元に寄せられた熱い唇が耳朶を甘噛みする。
熱い吐息が耳奥に注ぎ込まれると、痺れるような快感が一気に足元にまで達してしまい、廻縁の床板を踏む足先がふわふわとした高揚感に包まれる。
(っ…信長様の声…甘くて色っぽくて…聞いてるだけで気持ちよくなっちゃう……)
「っ…信長さま…待って…まだ、降る星を見ていたいから…っ…んんっ!」
骨張った長い指先で顎をついっと掬われて、少し強引に顔を後ろに向けられると、あっと思う間に唇が奪われる。
熱い唇が、私の反論を許さぬかのようにピッタリと重ねられて、呼吸を奪っていく。
「んっ…ふっ…あっ…ふぅ…ぅ」
角度を変えて重ねられる度に、僅かに開いた唇の端から、甘い吐息が抑えきれずに零れ落ちる。
(んっ…気持ちいい…蕩けてしまいそう…)
信長様の口づけはいつも、とびきり甘くて、私を芯から溶かしてしまう。
それだけでまるで媚薬のような効果があるのではないかと思うほどに、私はいつだって口づけだけで蕩けさせられてしまうのだ。
ーチュッ
長く深く続けられていた口づけは、仕上げのようにペロッと唇の端を舐められたあと、音を立てて離れていく。
「っ…はぁ…はぁ…んっ…」
上がった息を整えながら、潤む目で信長様を見上げると、眩しそうに目元を細めて私を見つめてくれる。
その目には抑えきれないほどの欲情の色が浮かんでいて、目が合ってしまった私の胸は早鐘のように忙しなく騒ぎ始めた。
「んっ…信長さま…?」