第59章 新しき城〜魔王の欲しいもの
結華と共に広間へ入ると、既に武将達は皆揃っていて、私達を笑顔で迎えてくれる。
「おっ、結華、来たな!久しぶりに逢ったら、でっかくなっててビックリしたぞ〜」
「政宗さんってば、今年の年始に逢ったばっかりですよ?」
「家康〜、お前はまたそういうことを…なぁ、朱里、結華、急に背が伸びたよな〜?」
「あっ、うん、そうなの、子供の成長って早いよね」
「くくっ…奥方様も成長途中か?」
「光秀っ、朱里を揶揄うのは止めろっ!」
「………全く、相変わらず全員揃うと騒々しいな、貴様ら」
「御館様!」「信長様!」
わいわいと騒々しかった広間が一気に引き締まったように、ピリッとした空気が流れる。
信長様が入ってこられ上座に座られると、武将達をはじめ家臣達も一斉に首を垂れる。
「家康、政宗、遠路はるばる大義である」
「「はっ!」」
「朱里、結華、此方へ来い」
「あっ、はい」
呼ばれて慌てて上座の信長様の隣へ座ると、信長様は正面を向いたまま、私にだけ聞こえるような声で、
「……その打掛、よく似合ってる。思ったとおりだったな」
表情を変えずに甘い声音で囁かれて、胸がきゅんっと疼いてしまう。
「っ…ありがとうございます」
(……信長様はずるいな…たった一言で、私を幸せな気持ちにさせる。
信長様が好きだから…貴方のことがもっと知りたくなるの……)
その日、久しぶりの再会に皆の話は尽きることなく、祝宴は夜遅くまで続いた。
変わらぬ顔ぶれが揃い、離れていた時間がなかったもののように自然に繰り広げられる武将達のかけ合い
賑やかで愉しい時間は、時を忘れさせ、私を満ち足りた気持ちにさせてくれた。