第59章 新しき城〜魔王の欲しいもの
昼過ぎ、家康と、途中で合流したらしい政宗の一行が、京を過ぎ、間もなく大坂の地へ入るという連絡を受けて、居ても立っても居られなくなった私は、秀吉さんと一緒に城門まで迎えに出ていた。
(信長様には不機嫌そうな顔されちゃったけど……早く二人に逢いたいもの)
「……朱里、よかったのか?御館様、ちょっと機嫌悪かったけど、喧嘩でもしたのか?」
秀吉さんが心配そうに私の顔を覗き込む。
(信長様ったら…秀吉さんにも心配されちゃってるし…)
「っ…大丈夫っ…喧嘩じゃないよ」
「そうなのか?」
そう、喧嘩じゃない…何故か朝から信長様が不機嫌なだけ……
家康と政宗に久しぶりに逢えるというのに…信長様が不機嫌な理由がさっぱり分からない。
(まぁ、今宵は宴もあることだし…夜までには、御機嫌が直ってるといいんだけど……)
「………おっ!朱里、見えたぞ…あれは……家康だっ!政宗は…後ろだなっ!」
徳川家の家紋が染め抜かれた旗指物を掲げた行列が、ゆっくりと近づいてくるのが見える。
その後ろには色鮮やかな青色の軍旗……伊達家の旗指物が揺れているのが見える。
「家康っ、政宗っ!」
城門を潜り、馬を降りた二人に駆け寄って声をかける。
「っ…朱里…あんた、こんなとこまで迎えに来てくれなくてもいいのに……」
「家康〜お前はまた可愛げのないことを……久しぶりだなぁ、朱里。結華も元気か?しばらくこっちにいるから、また美味いもん、いっぱい作ってやるぞ〜!」
「二人とも、逢いたかったよっ!」
「「っ……」」
(こんな満面の笑顔っ…反則でしょ……)
(相変わらず純粋無垢な奴っ…これは…信長様がいつまで経っても夢中になるのも無理ないよな……)
「「はぁ…」」
家康と政宗が、秘かに顔を見合わせて溜め息を吐いていたことに、私は全く気付くこともなく……只々、久しぶりの再会の喜びに胸を震わせていたのだった。