第55章 初恋の代償
高政を見送った後、私達は城へ向かって馬を歩ませていた。
信長様は、行きと違って今度はゆったりと馬を歩ませる。
「………信長様、あの…ありがとうございました。勝手なことばかりして、ごめんなさい…私…貴方に色々とひどいことを…」
「ふっ…本当にな。俺を惑わす女は貴様ぐらいなものだぞ。
さて…城に帰ったら、どのような仕置きをしてくれようか?」
ニヤッと意地悪そうに笑いながら至近距離で顔を覗き込まれて、ドキドキと心の臓が早鐘を打つ。
(っ…お仕置きって何を??)
「あ、あのっ…信長様?」
「俺以外の男に口づけを許すわ、勝手に城を出て追いかけようとするわ……貴様はどれだけ俺を振り回せば気が済むのだ。
………この俺に嫉妬をさせた罪は重いぞ?覚悟しておけ」
そう言って照れたようにプイッと横を向いてしまわれる。
その横顔は、怒ったような、照れたような、複雑な表情で頬がほんのり赤くなっていた。
(嫉妬??今、嫉妬って言った?信長様が私に嫉妬を…?っ…どうしよう…嬉しい)
いけないと思いつつも、嬉しくて顔がニヤけてしまう。
信長様が私に嫉妬してくれるなんて……
信長様はいつも自信たっぷりで余裕があって、お顔立ちも整っていて色気もある…だから、城の女中達や城下の娘達からも凄く人気があるのだ。
側室や妾でもいいから、と秘かに想いを寄せている者も多いと聞き、正直いつも気が気ではない。
私と恋仲になる前の、華やか過ぎる女性遍歴も……過去のこととはいえ、やはりモヤモヤしてしまう。
(嫉妬するのは、いつも私の方だけ…そう思っていたのに。
信長様が私に嫉妬を…ダメだ…顔が緩んじゃうっ…)
「っ…貴様…何をニヤけておる?」
眉間に皺を寄せた信長様に、いきなり頬をむにゅっと摘まれる。
「やっ…痛いです…うぅ…」
「反省が足らんな。この場で今すぐ、仕置きをされたいのか?」
「っ…あっ……やっ、待って…信長様っ…」
馬上にも関わらず、背後から指先で私の顎を掬い、首だけ後ろに向けさせると、唇を塞ぐように荒々しく口づける。
「んんっ…あっ…ん…」
ーちゅっ くちゅっ ちゅぷっ
「ふっ…あっ…信長さま…」
強引に奪うような荒々しい口づけなのに、少しも嫌じゃない。
もっと もっと
私を奪って
もっと もっと
貴方が欲しいの