第8章 月下の誓い
『秀吉に見つかるとややこしい』と、信長様が仰るので、人目を忍び2人でこっそりと城を抜け出す。
「朱里」
先に行く信長様が後ろを振り向いて、左手を差し伸べてくれる。
(手を繋いでくださるんだっ!)
嬉しくなって差し出された手を取ると、指を絡め、ギュッと力強く握り返される。心がふわっと温かくなって私もそっと指を絡めた。
城の外に出ると、予想以上の明るさで月の光が煌々と辺りを照らし出していた。信長様が頭上を見上げながら、ほぅと息を吐く。
「……今宵は満月か。美しいな」
「本当に。見事な満月でございますね」
「美しい月を見ながら、貴様と静かな城下を歩くのも悪くないな」
他愛もない会話をしながら、静まりかえった城下を手を繋いでゆっくり歩く。月明かりが優しく2人を照らしている。
(このまま時間が止まってしまえばいいのに。信長様をいつまでも独りじめしていたい……)