第49章 追憶〜秀吉編
ーちゅっ
一際響く音を立てて、朱里の唇を強く吸ってから、ゆっくりと離す
「…ん、はぁ…」
朱里の甘い喘ぎを聞きながら、廊下を去っていく人の気配に耳を傾ける。
「…くくっ、猿め…相変わらずお堅いな」
慌てふためく秀吉の顔を想像して、思わず口元が緩む。
実は早い段階で襖の前に気配を感じていて、わざと見せつけるように朱里の身体を愛撫していたのだ。
予想通りの秀吉の反応がおかしくて堪らない。
「んっ…え?秀吉さんが…どうかしたんですか?」
中途半端に中断した愛撫に物足りなさそうな顔をしつつも、朱里は乱れた着物を直しながら問うてくる。
「ん…そろそろ秀吉が探しにくる頃合いかと思ってな…」
乱れ落ちる黒髪を撫で、そっと耳にかけてやりながら、何食わぬ顔で話を続ける。
(秀吉に見られておったと知ったら、朱里はどんな顔をするだろう?くくっ…)
「…本当にそろそろお戻りになりませんと…秀吉さんに怒られちゃいますよ?信長様のこと、一番心配してるのは…秀吉さんですもの」
にっこりと微笑んで言う朱里の頬を、下から両手を伸ばし包み込む。
愛おしくて、そのまま頬を撫でていると、朱里の方から『ちゅっ』と軽い音を立てて口づけてきた。
「…なんだ?続きがしたいのか?」
「ゃ…違いますっ!」