第49章 追憶〜秀吉編
物想いに耽りながら御館様を探して向かう先は、やっばり朱里の部屋だった。
襖の前まで来て声を掛けようと思ったその時………室内から話し声がして………
「…信長様、よろしいのですか?今は政務のお時間では……」
「ふっ…構わん、少し休憩させろ」
「…っ…あっ…だめ、触っちゃ…」
「くくっ…だめなのか?それはつまらんな」
(っ…御館様??やはりこちらにいらっしゃったか…しかし、昼日中から何をなさって…)
何かいけないものを聞いてしまったような気になるが、城主が真っ昼間から人目も気にせず、とは…これは一言申し上げねばならん、と襖に手をかけ、少し開きかけたその時………
「んっ…信長さま…そこはっ…」
「あぁ…柔らかいな…直に触りたい」
「あ…ん…っ、だめ…それ以上しちゃ…」
(っ…一体何を…これは…入ってはまずいのか………??)
襖越しに聞こえてくる艶めかしい会話に戸惑いを隠せず、主君の情事を覗くなど無礼、という気持ちと、真っ昼間から破廉恥だとお諌めせねば、という気持ちがせめぎ合って、襖の前で立ち竦んでしまう。
しかも、先程少し開きかけてしまったせいで、隙間から中の様子が見える始末であった。
怖いもの見たさで隙間から中を見遣ると、そこには……朱里の膝枕で横になる御館様のお姿があった。
膝枕…それだけなら微笑ましい夫婦のひととき…だったのだが、御館様は横になりながら後ろに手を回し、朱里の尻をやわやわと揉みしだいておられるようだった。
尻を触っていた手は、やがては前へと回り、着物の裾を乱しながら太腿の付け根へと挿し込まれている。
「あっ…はぁ…やん、だめぇ…」
「ふっ…好い声だな」
朱里の口からは絶えず甘い喘ぎが漏れている。
身体を乱す手から逃れようと身を捩る様が、逆に誘っているかのように艶めかしく、見ているこちらも段々と落ち着かなくなってくる。
襖一枚隔てた先で行われている艶めかしい情事に目を奪われていると、やがて、御館様は朱里の後頭部に手を回し、ぐいっと強く引き寄せると、深く激しく、その唇を奪う。
ーちゅっ くちゅっ ちゅぷっ…
「んっ…あ、はぁ…信長さまぁ…」
(っ…うぅ…これは…見てられん…)
居た堪れなくなって、そっと襖を元どおり閉めると、動揺を隠しきれないまま、慌てて俺はその場を後にした。