第48章 満たされぬ心
家老達の行動を責めるつもりはない。
織田家の重臣としては、当然為すべきことを為したまでだろう。
仕える家の存続の為、跡を継ぐ者を望むのは家臣として当たり前の心情だろう。
それが俺の意思に反しているとしても、だ。
俺の父には、正室である母以外にも数多の側室がおり、子も多かった。
晩年になっても若い女を側室に召し上げては、子を孕ませていたから、顔も分からぬ歳の離れた兄弟も多数いたぐらいだ。
親父は、単に女好きだったのもあるのかもしれないが、数多の子を為し、それを政略の駒に使った。
次々と新しい女が側室になり、子が産まれる様を、正室である母が心の内でどう思って見ていたのかは、聞いたことがないので分からぬが、表向きは武家の妻として、毅然として奥を纏めていた。
それが武家の正室の在り方なのかもしれない。
朱里の父にも側室はおり、腹違いの兄弟もいるから、朱里も武家の正室がどういったものかは、頭では理解しているだろう。
だが……
俺は、朱里にそんな苦痛を強いるために妻にしたのではない。
出逢ったあの日から、朱里以外の女が俺の心の中に入る余地はなかった。
世間では側室を持つのが当たり前であったとしても、俺は朱里以外いらない。
俺が生涯愛する女は、朱里だけだ。
朱里の産む子以外は、子もいらん。
産まれた子も、政略の駒に使うつもりなどない。
俺に世継ぎがおらずとも、織田家も天下の平穏も、揺るぎなく安泰であり続けられるのだ、と………
それを皆に認めさせるには……どうすればよいのか…