第48章 満たされぬ心
朱里への贈り物を選んだ後、約束通り団子を食べるために茶屋へ寄る。
朱里と逢瀬をする時にいつも立ち寄る、馴染みの茶屋だ。
「信長様、いらっしゃいませ!まぁ、今日は結華姫様もご一緒ですか!少し見ぬ間に、大きゅうなられましたなぁ」
「女将、茶を二つと団子を頼む」
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「いただきま〜す」
もぐもぐと口いっぱいに団子を頬張り、幸せそうな顔で食べる我が子があまりにも可愛く、自然と口元も緩む。
「……美味いか?」
「はいっ!とっても美味しいです!…これも、食べてもいい?」
「いいぞ、好きなだけ食え。母上にも土産に買って帰るか?」
「はいっ!」
(この次は、朱里と結華と三人で来よう。出かける前、少し寂しそうな顔をしておったからな…)
「……そういえば、結華は来月、誕生日だな。祝いに欲しいものはあるのか?」
「ん〜、えっとねぇ…結華はねぇ、弟か妹が欲しいっ!」
「っ……」
「弟か妹ができたら、一緒に遊べるでしょ?お城の中には、一緒に遊べる子がいないんだもん……」
確かに、城内は大人ばかりで歳の近い遊び相手はおらず、まだ幼い姫とはいえ織田家の子としての教育を日々させている。
周りが大人だけでは、やはり退屈なのだろう。
「結華…すまんが、それはすぐには無理なお願いだな。いずれは叶えてやりたいと思うが…」
「ええぇ…」
明らかな落胆の色を浮かべるその姿に、子供ながらに一人で寂しい思いをしているのかと、可哀想にはなるが……
「結華、そのお願いは、母上には絶対に言ってはならん。
言わぬ、と父と約束してくれるか?」
「……うん…」
約束の指切りをしながらも、幼子の願いも容易く叶えてやれない、やるせなさに、心がモヤモヤと沈んでいく気がした。