第48章 満たされぬ心
それに加えて、月の障りが来るということは、その月も身籠れなかったということで……それによる精神的な負担も大きいようで、傍目にも分かるほど落ち込んでいる。
「ん……身体は平気です…でも…ごめんなさい、またダメでした…」
「謝ることはない。貴様は色々気にし過ぎだ」
俯く頭を優しく撫でてやると、コトンっと胸元に頭を寄せてくる。
「……俺は別に、孕ませる為だけに貴様を抱いているのではない。貴様が愛おしいから…身体がただ欲するから…毎夜、貴様を求めてしまうのだ」
「信長様……ごめんなさい、分かってはいるのです…でも…」
唇を噛み、泣きそうに顔を歪める姿を見て、朱里にこんな顔をさせている己の不甲斐なさが情けなくなる。
(俺とて朱里の気持ちは分からぬではない。朱里との子なら何人でも欲しいに決まっている。世継ぎにこだわる家老達の言い分も、納得はできんが理解はできる。ただ、周囲の世継ぎを望む声が大きすぎるのだ…何とかせねばとは思うが、人の口には戸は建てられん…)
「朱里…俺が愛する女は生涯、貴様だけだ。何があろうと、それは変わらぬ。周りの言うことなど気にするな」
「っ…はい…私も…信長様が好き…」
その夜は朱里の小さな身体を抱えるようにして眠った。
身を刺すような冬の寒さは、心まで凍らせてしまうかのように朱里の身体を冷やしており、俺はそれを少しでも暖めてやりたくて…自らの熱を分け与えるように、深く強く包み込んで、朝が来るまで抱き締め続けた。