第47章 祭りの夜
「……食わんのか?」
飴細工を握りしめたまま色々な屋台に目移りしている私の顔を覗き込みながら、信長様はニヤニヤと笑っておられる。
「…あっ…何だか可愛すぎて勿体なくて…」
「ふっ…ならば、俺が食わせてやろう」
「えっ…あっ…」
信長様の赤い舌が飴細工をペロッと舐めると……そのまま私の唇を塞ぎ、舌を絡めて強く吸われる。
ちゅっ ちゅるん ちゅぷっ
「んんっ…んっ…ふっ…あ…」
信長様の舌先が甘い
互いの舌が絡まるたびに、唾液が溢れて口内を甘く満たしていく。
先程まで聞こえていた祭りの喧騒が、どこか遠くの方に聞こえているかのように、今、目の前の信長様しか見えなくなっていく。
甘い口づけに身体の芯まで溶かされるような心地になり、信長様の腕に身体を預けると、ぎゅっと強く抱き締められる。
………ちゅっ
音を立てて唇が離れていくと、そこには、口の端を上げて妖艶な笑みを浮かべる信長様の姿があった。
「ん…信長さま…」
「くっ…甘いな…貴様との口づけは…この飴よりもずっと甘い」
口づけだけじゃ…足りない
身体の奥に灯された熱は、口づけ以上のものを求めてしまっていて…無意識に信長様を熱っぽく見つめていた。
「……そろそろ花火が上がる時分だな。
行くぞ」
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城下の喧騒を抜け、湖の側近くまで来ると、岸辺に腰を下ろす。
信長様は、私の浴衣が汚れぬようにと、懐から出した手拭いを敷いてくれる。
その気遣いが嬉しくて、信長様に寄り添うように身体を傾けた、その時………
ドーーーーンッという大きな音がして、光の筋が夜空に向かって上がったかと思うと
バーーーーンッという音とともに、暗い夜空に大輪の花が咲いた。
色とりどりの光の花は、バラバラッという音を立てながら暗闇の中へと消えてゆく。
「っ…綺麗…」
花火はすぐ近くの湖畔で上がっているようで、光の花を下から見上げるような形になり、その壮大な迫力と美しさに目を奪われる。
続けざまにドーーーン、ドーーーンっと上がる花火から目が離せずに、うっとりと眺めていると………
(ん?信長様?)