第47章 祭りの夜
「わ〜、賑やかですねぇ」
几帳面な秀吉さんらしく、長浜の城下はよく整備されていて、安土ほどではないけれど、人通りも多く、お祭りの屋台もたくさん出ていて賑わっていた。
「ふっ…はしゃぎ過ぎて転ぶなよ」
繋いだ手を少し強めに握られて、グッと傍へ引き寄せられる。
身体が触れ合って、またドキドキしてしまう。
今宵は何だかいつも以上に密着度が高いような………
「あ、あの、信長様??」
「ここは安土と違って俺の顔を知らぬ者も多い……くくっ…人目を気にせず存分に貴様に触れられるな」
「!?」
(……いやいや、安土でも人目、気にしてます?)
「朱里、欲しいものがあったら言え。何でも買ってやる」
「ありがとうございます…あっ、あれ……」
少し先に、飴細工を売る屋台を見つけた私は、信長様の手を引いて店の前まで行ってみる。
「うわぁ〜可愛い!」
店先にはたくさんの繊細な飴細工が並んでいて………
ツルやウサギ、蝶や花など、細部まで丁寧に作られ、色付けられた飴細工の数々に、一瞬で目を奪われる。
「ふっ…どれがいいのだ?」
「ん〜、迷っちゃいます…どれも可愛い…」
「……では、全部買い占めるか…」
「わわっ、ダメですよ、信長様! 待って、待って…今、決めますから……これ!これにします!」
私が選んだのは、白いウサギの飴細工。
目と長い耳の縁に、ほんの少し赤色が付けられている。
「では、店主、これをもらう…それと、これもな」
信長様は、店先に並べてあった小瓶に入った飴を指さす。
それは、色とりどりに色付けられた細長い飴が小さく切られたものが瓶いっぱいに入ったもので、見た目にもとても綺麗だった。
「ふふっ…金平糖みたいですね」
「秀吉には内緒だぞ」
悪戯っぽく笑いながら飴の小瓶を大事そうに手にする信長様が可愛くて、胸がキュンと疼いてしまった。
飴細工を手に持って、また色々な屋台を見て歩く。
かんざしや櫛といった小間物
風鈴や風車、子供の喜びそうな仕掛け細工
お団子や甘酒、唐辛子など
目を引く楽しいものの数々に、心が浮き立つ。
(あっ、唐辛子…家康にお土産に買って帰ろう…風車は、結華に見せたら喜ぶかなぁ…)