第47章 祭りの夜
「はぁ〜、私、どんどん体力が落ちてしまって…信長様、ごめんなさい…」
「謝る必要はない。四六時中、城の中で子供と一緒ではなかなか自分の時間も持てぬであろう?
体力は…俺が鍛えてやる…閨でな」
「!?やだ…もうっ!そんな…」
頬を赤く染めて恥じらう様が愛らしい…秀吉が一緒でなければ即座に口づけているところだが…まぁ、ここは我慢してやるか。
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長浜城に到着すると、私達は城門の前で、秀吉さんの家臣の方々から盛大な出迎えを受けてしまった。
秀吉さんは初めて城へ信長様を案内するということで、相当気合が入っていたみたいだった。
「御館様、祭りが始まるまでにはまだ少し時間がありますので、城の中でゆっくりなさって下さい!朱里も疲れただろう?」
「ありがとう、秀吉さん!」
「はぁ…秀吉、貴様も少し休め…はりきり過ぎだぞ」
信長様は、秀吉さんのおもてなし攻勢に辟易した顔をしつつも、その全てを断ることなく受けておられて……やっぱり信長様は秀吉さんを大事に思っておられるのだな、と少し嬉しくなった。
夕刻までお城の中でゆっくりした後、信長様と二人で城下へと降りる。
秀吉さんは気を遣ってくれたのか、
『お二人でどうぞ。遠巻きに護衛を付けますのでご安心下さい!』
と、秀吉さんにしては珍しいことを言って、信長様に驚かれていた。
「信長様、この浴衣…ありがとうございます。すごく素敵ですね」
「ああ、よく似合っておるな」
信長様はこのお祭りの為に、私に新しい浴衣を用意して下さっていたのだ。
白地に裾に美しい青色の紫陽花柄が大きく描かれた、大人っぽい雰囲気の素敵な浴衣。
今宵は浴衣に合わせて、化粧も少し濃いめに直していた。
「朱里、行くぞ」
さり気なく差し出された手をそっと握ると、すぐに指を絡められて少し近くに引き寄せられた。
引き寄せられた拍子に、肩がトンっと触れる。
ドキッとして信長様を見上げると…額にちゅっと口づけが降ってくる。
目を閉じる間もないほどの、一瞬の口づけ。
信長様の唇が触れた額が熱い。
久しぶりの恋人らしい触れ合いに、私の胸はドキドキと煩いぐらいに騒いでいた。