第46章 男と女
子は可愛い
『目に入れても痛くない』というのは、正にこのことか、と常々思うぐらいに、可愛くて仕方がない
結華がどんなに泣こうが、全く苛々しない
寝ない結華を延々と抱っこであやすことも、何の苦痛もない
結華のすることは、何でも許せるし、俺ができることは何でもしてやりたいとさえ思う
だが………昨夜は正直言ってかなり堪えた
あの後、別室でむつきを替えたり、あやしたりしていた朱里が再び眠りについた結華を抱いて出てくるまで、猛りに猛った己の欲は衰えることはなかった。
一向に萎えることなく、痛いぐらいギンギンに反り返るモノを持て余し、「いっそ自分で…」とも思ったが、それも何か虚しくて、結局そのまま寝むことにしたが……朝まで滾った状態は、正直なところ、精神的にも肉体的にも辛かった。
あれでは正に生殺し
中途半端に煽られた熱は、身体の奥で燻り続け、ぶすぶすと俺の心と身体を蝕んでいるようだ。
(これは…早急に何か手を打たねばならん)
「………さ、ま……御館様っ…」
思考の海に沈んでいた俺は、自らを呼ぶ声に、ハッと意識を浮上させる。
顔を上げると、目の前に秀吉の心配そうな顔があった。
(………あぁ…政務中だったか…)
それで漸く、ここが本丸御殿の執務室で、朝から秀吉と二人で政務中だったことを思い出す。
「御館様、大丈夫ですか?地方視察から戻られたばかりで、お疲れなのでは?少しお休み下さい」
「いや、大事ない。次は…この報告書か?」
気を取り直し、政務に集中する。
そこからは順調に進み、昼前には溜まっていた政務の殆どが片付いていた。
「お疲れ様でした、御館様。午後からは予定もありませんので、少しゆっくりなさって下さい……あっ、ちょっとっ!食べ過ぎですよっ!」
疲れた頭を休めようと、金平糖をバラバラと手のひらに転がして一気に口に放り込む俺を、秀吉が慌てて制するが、もちろん聞いてやる気はない。
「流石に疲れた…これぐらい大目に見ろ」
「………………」
悩ましげな顔をしながらも、秀吉はそれ以上、何も言わない。
金平糖の小瓶にも手を出さない。
普段、『疲れた』などと口にしない俺が、冗談混じりにではあっても、疲れたと漏らしたことを気に病んでいるのだろうか。
(此奴は本当に生真面目な奴よ)