第7章 誕生日の贈り物
厨を出て、次に向かうのは家康のお部屋
「家康、いる?入ってもいい?」
襖の前で声をかけると、中からボソッとしたぶっきらぼうな返事が返ってくる。
「どうぞ。勝手に入ってくれば?」
部屋に足を踏み入れると、家康は机の前で何やら薬を調合しているようだった。机の上には薬草が所狭しと並んでいる。
「ごめん、邪魔して。お仕事中だった?」
「……別に。薬作りは趣味だからアンタがいても邪魔じゃない。わざわざ来るなんて、何かあったの?」
(家康は相変わらずだな。…でも気遣ってくれるんだ)
「実は、家康に聞きたいことがあるんだ。もうすぐ信長様のお誕生日でしょ?家康は信長様にどんな贈り物をするのか知りたくて」
「は?そんなこと聞いてどうするの?……俺は別に…特に贈り物なんて考えてないけど…あの人の喜ぶものなんて知らないし」
案の定、冷たい答えが返ってくる。
「あっ、そうなんだ…私、信長様のお好きなものをよく知らないから贈り物が思い付かなくて。こうして皆の話を聞いて回ってるの」
「あの人は、アンタからの贈り物なら何でも喜ぶでしょ」
家康が溜め息を吐きながら呆れたように言う。
「政宗にも同じこと言われたけど……やっぱり本当に喜んでくださるものを贈りたくて……」
なかなかいい案が思い付かず、情けなくて、ついつい下を向いてしまっていた。そんな私の様子を見て少し心配そうに、
「相手のことを一生懸命想って選んだ贈り物なら、それが何であっても、きっと気持ちが伝わると思うけど」
「…そっか、そうだよね…ありがとう、家康。もう少し考えてみるよ!」