第7章 誕生日の贈り物
次に訪れたのはお城の厨
(この時間ならここにいるはずだけど…あっ、いた!)
「政宗、今日は何作ってるの?」
「おっ、朱里か。どうした?腹でも減ったのか?何か食わせてやろうか?」
竈門の前でお鍋の中を覗き込んでいた政宗が、こちらを見ながらニヤリと笑う。
「っ、違うよ!子供じゃないんだからつまみ食いなんてしないもん。…でも、それ何?美味しそうだね」
お鍋の中を見ると、黄金色のものがキラキラした蜜の中に浮かんでいる。辺りいっぱいに甘い匂いが漂っていた。
「栗の甘露煮だ。ほれ、1つやる。口開けろ」
子供みたいで恥ずかしかったけど、甘い誘惑に勝てず素直に口を開けると、大きな栗の実がポンっと口の中に放り込まれた。
柔らかな栗の食感とふぁっと広がる甘い味に、思わず口元が緩み、
「すっごく美味しいっ!政宗は天才だね!」
「まぁな。…で、今日はどうした?俺に何か用事か?」
(そうだった…つまみ食いしてる場合じゃなかったっ)
「あのね、政宗に聞きたいことがあるの。もうすぐ信長様のお誕生日でしょ?政宗は信長様にどんな贈り物をするのかと思って」
「俺か?俺は今年も豪華な料理を作って食べて頂こうと思ってる。国内外から珍しい食材を取り寄せてな。奥州からも海の幸を色々取り寄せてるんだ。信長様はいつもお忙しいから、誕生日ぐらいは美味いもん食ってゆっくりして頂きたくてな」
(美味しいお料理か…政宗らしい贈り物だな)
「お前は何を贈るんだ?」
「まだ決まってなくて…信長様のお好きなものが分からなくて、こうして皆の話を聞いてるとこなんだけど……」
政宗はニヤリと笑って、私の顔を覗き込みながら
「贈り物はお前自身でいいんじゃねえのか?貴方の好きに抱いて下さい、ってな」
「ちょっ、なんてこと言うのっ、そんなこと言えないよ!」
「くくくっ、冗談だよ。本気にすんなよ、可愛いな。……まぁ、でもお前からの贈り物なら何でも喜ばれるだろ、信長様は」
政宗の恥ずかしい提案が頭から離れず、少し赤くなった頬を押さえながら厨をあとにした。