第44章 生命(いのち)
(信長様が子のむつきを??うぅ、想像できない…)
「貴様、何をおかしな顔をしている」
「えっ、いえ…何でもないです…」
信長様は不満げな顔で私を見遣りながらも、徐に私の腕を引いて引き寄せると、その逞しい腕の中にすっぽりと抱き竦める。
すぐに首筋に顔を寄せ、熱い唇が近づいてくる。
かかる吐息が熱い。
顔に落ちかかる髪をすっと耳にかけると、露わになった耳朶に熱い唇が触れる。
「あっ…あんっ…やっ…待って…」
私の制止の声を無視して、信長様の唇は耳から首筋へと降りていく。ジュッっと大きな音を立てて吸い付かれると、もうそれだけで感じてしまった。
(あぁ…どうしよう、普段よりも感じやすくなってる…)
首筋への愛撫はそのままに、骨張った手が着物の上から胸に触れて、ゆっくりと円を描くように撫でていく。
「んっ…やっ…やだ…ダメです…」
「ふっ…触れるだけだ。それ以上はせん」
「やっ…んっ…」
(うぅ…信長様、それもダメなの…)
這いまわる舌と胸を揉む手に翻弄されて、いつものように流されてしまいそうになる。
信長様の手が、着物の袷の間から滑り込んで直接肌に触れた途端、お腹の奥がきゅっと疼いて…
(っ…ダメだっ)
「信長様…お願い、口づけも触れるのも、しちゃだめなの…」
胸乳に触れていた信長様の手を抑えながら言うと
「……何故だ?触れるだけだ。交わるわけではないならよいだろう?」
「家康が…産まれるまでは深い口づけも触れ合いも禁止だって…」
信長様は、眉間に皺を浮かべて益々不満げな顔になって、
「訳が分からん…何故だ?」
「っ…身体が感じちゃうと、産み月が早まるかもしれないから…だから、気持ちいいことはしちゃダメだって……」
「ん?」
「信長様に触れられると、それだけで気持ちよくなっちゃうから…ダメです……」
不満気で機嫌が悪そうだった顔が、みるみるうちにニヤニヤと嬉しそうな顔になる。
「なるほどな…しかし、あとひと月も貴様に触れられんとは…拷問か?」
今度は心底悩ましげな顔になる。ころころと表情を変える信長様が可愛くて……思わずその唇にチュッと軽い口づけをしてしまった。
「!?」
「………軽いのなら…大丈夫です」
言うや否や、チュッチュッと啄むような口づけが落ちてくる。
(んっ…幸せ…こんな幸せがずっと続いて欲しい…)