第43章 決戦
船室に入ると、信長様は躊躇うことなく、私の濡れた着物の袷に手をかける。信長様の熱い手が肌に触れて、胸の鼓動が速くなる。
「あっ…や…信長さま…自分で、しますから…」
「……身体が冷えておる…早く拭かねばな。俺の身体で直に暖めてやりたいところだが、まだ甲冑を脱ぐ訳にはいかぬゆえな、くくくっ…」
「や…んっ…もう…」
信長様に背中を向けて、濡れた肌と髪を手拭いで拭いてゆく。
身体を拭き終わって、ひと心地ついたところで、はたと気がつく。
「……あ、あの…信長様?…着替えってありますか??」
「ん…?あぁ、そこの寝台の横に衣装入れがあるだろう?そこに何か適当なものはないか?この船は、異国から丸ごと買い取ったものゆえ、南蛮の衣装もあるはずだ」
後ろを向いていたはずの信長様が、自然な様子で振り向いて言う。
「きゃあっ…こっち見ないで下さいっ!…ええっと…これかな?」
衣装入れの中には、見たこともない生地の南蛮の衣装が幾つか入っているようで、その一番上の紅い艶々した生地のものを手に取って広げてみる。
(わぁっ!生地も形も着物と全然違うんだ…う〜ん、どうやって着るんだろう??)
見よう見まねで何とか身に纏ってみたその衣装は、足元までふんわりと広がる裾と、対照的に腰の辺りがきゅっとくびれた作りになっていて……更には胸元が大きく開いて肩も露わになり…なんとも扇情的なものだった。
「……着替えたか?もういいか?」
「あっ…やだっ…待って…」
私の制止を聞く前に振り向いた信長様は、ほぅ…と一息吐いてから熱い眼差しで私を見つめる。
「ふっ…これはなんとも…唆られる衣装だな」
「や…いゃ…あんまり見ないで下さい…」
思わず胸元を隠そうとした私の両手を、信長様の大きな手が捉える。あっと思った時には既に、信長様の端正な顔が近づいてきていて……露わになった鎖骨にチュウっと吸い付かれていた。
「ひゃ…ぁんんっ…信長さま…やっ…」
チュッチュッと啄むように胸元に何度も唇を押し付けた後、最後に唇に掠めるような口づけを一つ落としていく。
「……ふ…あ…はぁ…」
口づけだけで熱が上がってしまったように、身体が熱い。
「くくっ…そんな蕩けた顔をしおって…その姿も他の男どもには見せられぬな。……戦が終わるまで、ここで大人しく待っておれ」