第43章 決戦
その時、前方の島々の間から毛利の船団が姿を現す。大型の安宅船から小さな小早船まで含めると、予想外に大きな数となっている。現れた船団は、織田軍の船を囲むような隊形をとろうとする。
その中心には、一際大きな異国船…信長の乗るガレオン船と同じ南蛮の船が見える。
「……元就は、あそこか…」
こちらに向かってくる毛利の船に対して、鉄甲船を前方に配置させる。徐々に距離が近づいてきた、その時、毛利の船から鉄甲船に向かって無数の火の球が飛んで来るのが見えた。
「…焙烙火矢か…鉄甲船には効かんっ!」
表面を鉄板で覆われた鉄甲船は、焙烙火矢を難なく防ぎ、毛利の船を十分に引きつけてから大砲を放つ。
次々に大砲が放たれ、海上は激しい轟音と水飛沫が上がり、船が粉々になって波間に漂っている。
元就の乗るガレオン船からも大砲が放たれているが、鉄甲船は大砲をも防ぐ、鉄壁の防御力を誇る。
毛利の船団は次第に数を減らしていき、残る船の船上では織田軍の兵達が次々に乗り移り、白兵戦が始まっていた。
「…光秀、こちらの船を元就の乗る船に近づけるよう命じよ」
「っ…お待ち下さい、御館様っ!この船は鉄甲船より防御力が劣っています。元就は御館様を狙っています。前に出るのは危険です。」
「それは、相手も同じこと。ここで元就を逃す訳にはいかん。罠であろうが構わん………朱里を取り戻す」
「御館様……」