第41章 幸せな時間
翌朝、射し込む朝の光の眩しさに目を覚ます。
「……起きたのか?」
隣にぬくもりを感じて、ぼんやりとした目で見遣ると、片肘を枕にして横になり、私を見つめる信長様の姿があった。
「…っ…信長様、いつから起きていらしたのですか?」
「ふっ…貴様があまりに惚けた顔で眠りこけておるのでな…いつまで寝続けるのか、と見ておったのだ、くくくっ…」
「やっ…もうっ…子ができてから何だか眠気がひどくて…いつまででも眠れてしまうんです…起こして下さればよかったのに」
「別に構わん、昨夜は疲れさせたしな。今日はゆっくり休んでおればよい」
「ありがとうございます。でも今日は千代と城下へ行くので…」
私の言葉に信長様はあからさまに眉を顰める。
「…城下へだと?千代と二人でか?身重の身体で…危ないのではないか?今日は政務が立て混んでおるゆえ、俺が一緒に行ってやる訳にもいかぬし…急ぎの用なのか?」
「ふふ…大丈夫ですよ。体調が良くなったので、子のむつきでも縫おうかと思って。反物屋さんで布地を買い求めたいのです」
私の話を黙って聞きつつも、信長様はまだ納得いかない様子で、
「そのようなもの、城に商人を呼べばよい。貴様がわざわざ城下まで出向く必要はない」
「子が身に着けるものは自分で見て選びたいのです。
それに、部屋に閉じ籠ってばかりいないで少しは動いた方が良い、と家康からも言われていますし」
「………………」
信長様は、何事か思案するように押し黙っている。
「用が済んだらすぐに戻りますから…あまり心配なさらないで」
信長様の目をじっと見て訴えかける。前々から楽しみにしていたんだもの…絶対に行きたい。
「……はぁ…分かった。但し、護衛の為に家臣を同道させる、よいな?」
「はいっ、ありがとうございます!」
そうと決まったら早く起きて身支度を整えようと、二人して着替えて寝所を出たところで………昨夜から畳の上に転がったままになっていた、例の『枕絵』が目に飛び込んでくる。
「「あっ!」」
(そうだ!昨夜は上手く誤魔化されてしまったけど…この枕絵のこと、まだ説明してもらってなかった!)
「……信長様?私、信長様がこの枕絵を見ていらした理由、まだ聞いてないんですけど?」
「っ…いや…これは…」
(くっ…まだ覚えておったのか…)