第41章 幸せな時間
その夜、天主にて〜
湯浴みを終えた私は、夜着に着替えて信長様の待つ天主へ上がる。
襖を開けると、先に湯浴みを終えていた信長様は、文机の前で何やら絵巻物のようなものを広げておられた。
たまたま声をかけずに襖を開けてしまった私の姿を見て、ひどく慌てた様子でその絵巻物を片付ける信長様。
それはもう、初めて見るような慌てぶりで……
「……信長様、それ、何ですか?」
「……何でもないっ。それより、入る時は声ぐらいかけよ」
言いながら、絵巻物を後ろ手に隠そうとされている。
心なしかお顔が赤くなっているように見える。
(……おかしい…この慌てっぷり。何があっても冷静な信長様らしくない…)
「その絵巻物…何なんですか?私にも見せて下さいっ!」
「何でもないと言っておるだろう…貴様が見るようなものではない」
そう言って不自然に視線を逸らす信長様。
(…絶対おかしい…何を隠しておられるの?…こうなったら、何が何でも見てやる!)
「あっ、文机の下に何か落ちてますよ!」
「…なに?」
信長様が文机の下を覗き込んだその隙に、さっと信長様の背後に回って、後ろ手に隠された絵巻物に手を伸ばす。
「あっ、こらっ、朱里っ、止めよ!暴れるでない!転んだら危ないだろう!」
慌てて私を制止しようとする信長様と揉み合いになって、その拍子に持っておられた絵巻物が手から滑り落ちた。
「「あっ!」」
畳の上に落ちた絵巻物はころころと転がって…転がりながら中を広げていく…
「こっ、これは……」
そこに描かれていたものは………