第40章 萌芽〜めばえ
「家康の見立てでは……『つわり』ではないか、と…」
「なにっ?つわり、だと?……ん?つわり?」
訳が分からない、という顔で目を泳がせる信長様の手を取って、私は自分のお腹の上にそっとその手を乗せた。
「……御子が…信長様の御子がここに…できたようです」
何だか恥ずかしくて小さな声になってしまった…でも、信長様の目を見てはっきりと伝えられた、と思うけど…
信長様は一言も発せられない。
(っ…あれ?声、小さすぎて聞こえなかった??もう一回言うのは…さすがに恥ずかしすぎるっ)
「……あの…信長様?」
もう一度呼びかけてみると、ハッと我に返った信長様は…
「……子ができた、だと? まことか? でかしたぞっ、朱里っ!ようやったっ!……そうか…俺に子が…」
そのままぎゅうっと強く抱き締められる。
(こんなに興奮されてる信長様を見るのは初めてだわ…良かった、喜んで下さって…)
本当は少し不安だったのだ。信長様が子供を持つことに対して複雑な思いを持っておられることを、聞いていたから……
私に子ができたと聞いてどんな顔をされるかと、ずっと不安で仕方がなかった。
こんな風に喜んでもらえるとは思っていなかったから、今、すごく嬉しい。
「朱里…」
私の名を優しく呼んだ熱い唇が、私の唇にそっと重なる。舌先が口内に侵入し、舌を絡めてきつく吸い上げられると、身体の芯が熱を持ってきたのが分かる。
チュウッ チュッ チュプッ チュッ
「っ…あっ…はぁ…んんっ…」
口づけはそのまま首筋から鎖骨、胸元へと落とされていき、次々と紅い華が咲いていく。
同時に、信長様の熱い手が夜着の袷から入り込んで、胸を直接やわやわと揉み始めた。
「んっ……信長さま、だめです…これ以上しちゃ…」
胸の尖端を弄っていた指がピクリと止まる。
「っ…はぁ…家康が、子が出来たら、安定するまで、しちゃダメだって…はぁ…」
私の言葉を聞くと、信長様はすぐに夜着の袷に差し込んでいた手を引き抜いて……襟元を綺麗に整えてくれた。
「………いつまでだ?いつまで貴様に触れられん?」
絞りだすような切ない声で問われて、信長様が愛しくて可愛くて…その頭を自身の胸元にぎゅっと引き寄せて抱き締める。