第40章 萌芽〜めばえ
動きが止まった私を心配そうに覗き込む政宗に気がついて、慌てて顔を上げる。
(っ…いけない、政宗に心配かけたらダメだ…お饅頭だもん、好きなものだし、食べれる…よね?)
「ごめん、大丈夫。いただきます…」
恐る恐る一口齧って、もぐもぐ…ごくん、と飲み込む。
餡子の甘さが口に広がって、(食べれた…)と安心した…次の瞬間、先程とは比べ物にならないぐらいの激しい吐き気に襲われる。
「ゔっ…おぇ…」
あまりの吐き気に我慢出来ずに口元を押さえるが、耐えられずに少し戻してしまった。
「朱里っ、お、おい、大丈夫か??」
「ひ、姫さま…大丈夫ですか??」
「ご、ごめん、政宗…せっかく作ってくれたのに…」
人前で吐いてしまったことで、生理的なものと羞恥心からくるものとで目頭に涙が滲んでくる。
「そんなこと、気にすんな!待ってろよ、今、家康を呼んでくるからっ!」
政宗が千代に何事か指示してから、バタバタと部屋を出て行くのをぼんやりと見送りながら、いまだ続く吐き気を抑えようと深呼吸を繰り返す。
(ああ…私、どうしちゃったんだろう…暑気あたりでも、こんなこと初めてだ…それとも…何か重い病気なんだろうか…)
「姫様、寝所へ参りましょう。家康様が来られるまで横になっておられた方がいいですよ」
千代が、汚れた手や口元を綺麗にしてくれたあと、優しく背中をさすってくれる。
(ダメだな…皆に心配かけちゃってる)
「千代、ごめんね…ありがとう」