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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第39章 紫陽花の寺


和尚様に寺の一室に案内されると、その部屋から見える庭の紫陽花もまた、見事に咲き誇っていた。

「わぁ!こちらは濃い桃色の紫陽花が多いですね!」

(本当に紫陽花の色って不思議。咲き始めは白いのに、徐々に色を変えていく。何度見ても飽きないな)

縁側に座り、和尚様が点てて下さったお茶を頂きながら、時間を忘れてうっとりと紫陽花を眺めていると、先にお茶を飲み終わった信長様が徐に腰を上げる。

「朱里、俺は近隣の村の様子を見てくる。この辺りは地盤が緩い土地柄ゆえ、雨が降り続いて民達が難儀している事がないか、調べてくる。
沢彦、しばらくの間、朱里を頼む」

「はいはい、お気をつけて行ってらっしゃいませ」

信長様が颯爽と部屋を出ていかれると、和尚様と二人きりになった。

「奥方様、もう一杯いかがかな?」

「ありがとうございます…あっ、あの、私のことは朱里とお呼び下さい。奥方様って呼ばれると…何だかくすぐったくて…。
あのっ、和尚様は信長様と随分お親しそうなご様子ですけれど、信長様はよくこちらにお見えになるのですか?」

私の問いかけに、和尚様は遥か昔に想いを馳せるような遠い目をして、ゆったりと話し始めた。

「拙僧は、信長様のご幼少の折からの教育係でございました。あのお方には、儒学、兵法、漢詩、天文学、帝王学、など私の知る限りのあらゆる知識をお教え致した。
元服の折には、お父上信秀様に請われて『信長』という名をお付け致しました。天下に名を馳せ、全ての大名の頂点に立たれるようなお方になられるように、との意味を込めてお名付けしたのですよ」

「まぁ…そのような深い繋がりが…」

(信長様が随分と親しげに話されているから、どのようなお方かと思ったら……信長様の師にあたる方だったなんて…)

「朱里様は、信長様の掲げられる『天下布武』の意味をご存知か?」

和尚様の思いがけない唐突な問いに、その真意が読めず戸惑う。

「あ、えっと…『天下に武を布く…武力で天下を治める』ですか?」

「言葉どおり解釈すれば、そのとおりなのですが…信長様の目指される『天下布武』は、『七徳(しちとく)の武をもって天下を平和に保つ』という意味なのです。決して武力で抑えるという意味ではないのです」

「七徳の武、ですか?」

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