第38章 愛しき日々
誕生日の宴当日〜
まだ夜が明けきらぬ薄闇の中で目を覚ました私は、徐々に目が闇に慣れていくのをゆったりと感じながら、隣に眠る愛しい人の寝顔を見つめていた。
身体にはまだ昨夜の情事の余韻が残っていて、少しの気怠さを感じるが、それすらも幸せに思える。
いつもなら信長様の方が早く起きていて、私が目覚めるのを待っていて下さるけれど…今朝は何故か随分早く目が覚めてしまったようだ。
(信長様の寝顔…きれい。睫毛が長くて、唇も艶めいて色っぽいし…寝顔まで綺麗なんだな…)
思わず覗き込んで間近でじっと見つめてしまい、その端正な寝顔にドキドキと胸がときめく。
………と、その時、眠っているはずの信長様の手が私の方へ伸ばされて、あっと思う間もなくグイッと引き寄せられた。
「っ、きゃっ! やっ…んんんっ…」
深く重ねられる唇。息が出来ないぐらいに、激しく求められる。
「あっ…ふっ…あぁ…ん…」
角度を変えながら長く長く啄まれた後、チュッ、と音を立てて離れていく。
口づけだけで、身体の奥に残っていた昨夜の熱に再び火が点いてしまったようで、『もっとして欲しい』というかのように、じんじんと疼いている。
「っ…いつから起きておられたのですか?」
「ふっ…貴様があまりにも近くで俺の顔を覗き込むものだから、口づけて欲しいのか、と思ったのだが…違ったか?」
ニヤニヤと意地悪そうに口の端を上げて微笑む、その姿に思わず見惚れてしまい、またも鼓動が早くなった。
「もうっ!揶揄わないで下さい!」
騒ぐ胸の内を悟られまいと、密着した身体を離そうと身動ぐが、信長様に私を離す気はないらしく、その逞しい腕はガッチリと私の腰を抱き寄せている。
「んっ…信長様…お誕生日、おめでとうございます」
信長様のお顔を見つめながら、祝福の言葉を囁く。
目覚められたら、一番に言おうと思っていたのだ。
「…ああ。目覚めて一番に貴様の蕩けた顔が見られるとは、今日は良き日になりそうだな…くくくっ」
「もう……いじわるばっかり…」