第1章 出会い
(さすがは御館様。相変わらず無駄のない動きをなさる)
秀吉が感心しつつ、自らも敵を斬り伏せていた、その時、
信長の背後の林の中から、微かに動く人影と、僅かな火薬の臭い…
「信長様、危ないっ!」
ハッとして叫ぶが、(くっ、遅かったか)
視線の先に引き鉄に指をかける、黒装束の男の姿が目に入る。
咄嗟に秀吉が信長の側に走り寄ろうとしたが…
それよりも早く、どこからともなく飛んで来た小刀が黒装束の男の手首に突き刺さる。
「パーンッ」と乾いた音を立て、弾丸は狙いを大きく外れて空に放たれていた。光秀が素早く男を取り抑える。
「御館様、お怪我はっ?」
「大事ない。それよりも今の小刀は誰のものだ?」
2人が小刀が飛んで来た方向を見遣ると、そこには真っ白な白馬に跨る1人の女の姿が……
信長の鋭い視線と目が合うと、女はふわりと微笑み、馬首を返して風のように駆け去って行った。
(女だと?あの距離から命中させるとは…なかなかの腕だな)
信長は口の端を上げ、不敵な笑みを浮かべながら、女が去って行った方を見やるのだった。