第35章 伊勢へ
安土から伊勢、安濃津城までは、『千草街道』という千草峠を越える経路を行く。
千草越えは道幅も狭く険しい山道が続くため、日が暮れる前に通過しておく必要があり、今夜は峠を越えた先で宿をとる予定であった。
「……んっ、やっ…あっ、だめ…」
片手で手綱を握り、器用に馬を歩ませながら、私の腰に回したもう片方の手はお腹から徐々に上に上がってきて、着物の上から胸を下から持ち上げるように揉みしだいてくる。
着物の上からでも分かるほどに勃ち上がった乳首をキュッと摘みながら、耳朶を甘噛みされて、馬上だというのに甘い声を漏らしてしまう。
「っ、はぁ…信長さま…だめです、こんなの…」
「ふっ、そうか?よい啼き声だがな」
「……危ないですよ。落馬したらどうするんですか??」
「俺はそんなヘマはせん」
「んっ、もう!
あっ、やっ…やだ!そっちはほんとに駄目です!」
乗馬用の馬乗り袴の隙間から、無造作に入ってこようとする手を慌てて引き剥がすと、キッと睨んでみせる。
が……睨んだ効果は全然で……信長様はどこ吹く風といった調子で、引き剥がされた手で今度は着物の上から私の身体中を撫で回してくる。
「信長様っ!っ、うっ…護衛の方に見られちゃう…」
「大丈夫だ。極力離れろ、と言っておいただろう?」
(いや、でもこれは流石にバレるでしょ……恥ずかしいっ)
突然、顎に手をかけて、後ろを向かされると、私の乾いた唇に熱い唇が重ね合わされてピッタリと塞がれる。
「んんんっ!」
息が苦しくなって、もう何も考えられなくなる。
身体の中心から、燃えるような熱情が溢れ出して、思考を奪って行く。
気がつくと、いつの間にか信長様の胸に、もたれかかるように身体を預けていた。