第34章 すれ違い
翌朝
天主に射し込む朝の光を目蓋に感じて、ゆっくりと目を開けた。
(ん……あれ、もう朝??)
ぼんやりとした意識のまま、気怠い身体を起こすと、掛け布がはらりと落ちて、裸の身体が露わになる。
(ひゃ……そのまま眠っちゃったのか…って、あれ??
私、あの時、気をやって…もしかして、そのまま朝まで??)
次第に意識がはっきりしてきて、昨夜の記憶が段々と蘇ってくる。
(どっ、どうしよう??
信長様、怒ってらっしゃるよね…途中だったのに…
っていうか、どこに行かれたんだろう? もう褥にも居られないし)
「……朱里? 起きたのか?」
寝所の襖がすっと開いて、既に着替えを済ませた信長様が入って来られる。
「っ、信長様っ。あのっ……ごめんなさいっ!」
「ん?」
「昨夜は…その…私、途中で意識を失ってしまって…ご満足…頂けなかった…ですよね??」
「くくくっ…随分な乱れようだったな。
あのような妖艶な姿を見せられて、それだけで十分満足だったぞ?」
「やっ、もう!そんなこと言わないで下さいっ!」
「ふっ……何もナカで果てるだけが全てではない。
俺を感じて乱れる貴様を楽しむのも悪くない」
ふわりと包み込むように抱き締められて、耳元で甘く囁かれる。
それだけで心も身体も満たされて、先程までの不安だった心が嘘みたいに軽くなった気がした。