第33章 母と子
もやもやした感情を持て余しながら、広間に行くと、既に武将たちは皆揃っていた。
祝言を挙げてから初めて皆と一緒に朝餉をとる。
「朱里様のお席は信長様のお隣ですよ」
ニコニコしながら教えてくれる三成くんのことが、今日はとても恨めしい。
これまでは上座から一つ下がった位置に据えられていた私の膳が、今日は信長様の隣に用意されていた。
(嬉しいけど……今日は気まずい)
「……失礼します」
「………ああ」
無言で箸を口に運ぶ私達の様子に、広間の雰囲気が変わり始める。
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「………おい、家康。何だよ、あれ」
「知りませんよ、喧嘩でもしたんですかね」
「新婚二日目にして喧嘩かよ…何があったんだ??」
「喧嘩など、これまで一度もされたことなかったお二人がまさか…」
「っ、御館様………」
「秀吉、お前、何か聞いてないのかよ」
「………いや、何も…」
「光秀は?」
「………知らぬな」
「ちっ、右腕と左腕が揃っていながら、役に立たないとはな」
「………貴様ら、煩いぞ。黙って食え」
上座から冷たい一言が降ってきて、一瞬でしんと静まり返る。
信長様から発せられるピリピリした苛立ちの空気が、広間を侵食し、誰も言葉を交わせなくなる。
無言のまま食事を終えた私は、そのまま広間に残って軍議に入る武将たちと別れて自室に戻ることにした。