第33章 母と子
「……俺が話していいことかどうか分からないけど……
報春院様は………信長様の御母上様だよ」
「っ、ええっ、御母上様??」
そういえば、以前何かの拍子に聞いたことがあるのを思い出す。
信長様の御母上様は、伊勢国で弟の信包様のお城で暮していらっしゃるって………。
妹のお市様とそのお子たちも一緒におられるお城だ。
でも………信長様は以前、『母を追放した』とも仰っていたけど…どういうことだろう…
「信長様と報春院様は……ちょっと複雑な関係なんだ。
子供の頃も、別々の城で暮らしておられたようだし。
俺が今川へ移った後のことは、詳しくは知らないけど…」
「教えて、家康! 知ってることだけでいいから…」
「…はぁ…あの人、なんて言うかな…知らないよ、怒られても」
家康から聞いた信長様と御母上様の話は、私の想像を遥かに越えた、重く心の痛む内容だった。