第31章 祝言
南蛮寺
千代とともに輿で南蛮寺まで来た私は、寺内に設けられた控えの間で婚礼の儀が始まるのを待っていた。
「朱里、俺だ、入るぞ」
襖を開けて入ってきた信長様は、黒紋付の羽織袴の正装姿で、信長様の鍛えられた体躯によく似合っていて、思わず見惚れてしまう。
(完璧すぎて、いつも以上にドキドキするな…)
入ってきた信長様も白無垢姿の私を見て、一瞬息を呑み、それから口元に柔らかな笑みを浮かべた。
「…ああ…美しいな。よく似合っておる」
「ふふっ、ありがとうございます。信長様も素敵です」
互いに見つめ合い、自然と距離が縮まっていき、信長様が私をその腕の中にすっぽりと抱き竦める。
しばらくそのまま抱き締めた後、身体を離した信長様は、私の手を取る。
「……では、行くぞ」
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礼拝堂の中では、前列から秀吉さんたち武将のみんなが順番に席に着いていて、安土の民たちも中に入ることを許されていた。
顔見知りの商人の人や町の人達の姿もあり、堂内に入りきれない町の人達は外にまで多数溢れているようだった。
(こんなに沢山の人が祝福してくれるなんて…嬉しい)
「朱里、綺麗だぞ。おめでとう」
秀吉さんが目を真っ赤に潤ませて、今にも泣きそうになりながら声を掛けてくれる。
「ほぅ…小娘が見違えたぞ。
今日ばかりは揶揄い甲斐がないほど、美しいぞ」
「朱里、おめでとう。
宴、楽しみにしとけよ。お前の為に腕によりをかけたからな」
「……まぁ、似合ってるんじゃない。
おめでとう…幸せになりなよ」
「朱里様、お綺麗です。日ノ本一の花嫁様ですね!」
秀吉さん 政宗 光秀さん 家康 三成くん
口々に紡がれるお祝いの言葉を聞きながら、心の奥がじんわりと暖まっていく。
(こんなに祝福してもらって…私はなんて幸せなんだろう)
「みんな…ありがとう!」