第30章 南蛮の風
物想いに耽っていると、突然、教会中に響く澄んだ音色の音楽が聞こえてきた。
初めて聴く西洋の楽器の音色
奏でられている音楽も聴いたことのない旋律のものだが、美しい音色は耳に心地良く響く。
「……信長様、これは?」
「美しい音色だろう?『おるがん』という、南蛮の楽器だ。
これは、祈りの場で演奏される音楽だそうだ」
信長様は目を瞑り、美しい音色に耳を傾けておられる。
周りの皆も音楽に耳を傾けながら、手を合わせて神に祈りを捧げている。
荘厳な雰囲気に圧倒されつつも、私も目を瞑って美しい音色を楽しんだ。
「オルガンティノ、今日も見事な演奏であったな」
「アリガトウゴザイマス。
オルガンハ、コンレイノバデモエンソウサレルノデスヨ」
「コンレイ?ああ婚礼……祝言のことか?
教会は祝言を挙げる場でもあるのか?」
「ハイ、カミサマノマエデ、エイエンノアイヲチカイマス。
ノブナガサマモ、モウスグ、シュリサマト、コンレイヲアゲラレルノデシタネ」
「ほぅ、南蛮式の婚礼か、興味深いな。
オルガンティノ、もっと詳しく聞かせろ」
信長様は興味津々で、オルガンティノ神父に南蛮式の婚礼の様子やしきたりについて質問をしている。
(南蛮式の婚礼…どんなのだろう??
先程のような美しい音楽が流れる中で永遠の愛を誓うなんて……夢のような時間になりそう)