第29章 決意
「っ、私…ちゃんとお話したいのです。
信長様を心からお慕いしていること
信長様の大望の為に共に歩んでいきたいこと
北条家は織田家にとっての益にはならないかもしれないけど…信長様のお傍にいたいこと
私の為に信長様が悩まれるお姿は見たくはないのです。
私と信長様、二人の事だから…私も私にできることをしたいのです」
「っ、朱里、貴様……」
起き上がって、朱里の身体をギュッと抱き寄せる。
強く抱き締めると折れてしまいそうな細い身体
そのどこに、このような芯の強さを秘めていたのか
初めて出逢ってから、まもなく一年になろうというが、未だに新しい一面を見せられて、その都度惹きつけられる
(俺が守ってやらねば、と思っていたが…この俺が考えを改めねばならぬか)
「……貴様、いつの間にそんなに強くなった?」
「……強くはないですよ。
貴方のお傍にいる為に…強くなろうと思っているだけです」
花が綻ぶような笑顔で微笑む朱里を見て、愛おしさが抑えきれず、その蕾のように可憐な唇にそっと口付ける。
「んんっ、ふっ…あぁ…」
チュッチュッと啄むように角度を変えて何度も口付けてから、そっと唇を離す。
「ふっ、貴様といると退屈するということがない。
……誰が何と言おうが、決して手離しはせぬ」
「っ、はいっ!生涯お傍におります。
……信長様も覚悟なさって下さいませ」