第27章 再会
家康の馬に一緒に乗って、船が停泊する沖近くまで急ぐ。
小早船に乗せてもらって、鉄甲船に近づいていくにつれ、次第にその全容が見えてくる。
(近くでみるとすごく大きい…
こんな船を何隻も動かせるなんて信長様の力はやっぱりすごいんだ…)
「朱里っ!」
「秀吉さん!光秀さんも!二人とも無事でよかった…」
「くくっ、秀吉はそうでもないぞ。
堺から小田原まで船酔いで死んだようになっていたからな」
「なっ、光秀っ、余計なこと言うな!
大体、御館様はともかく、お前まで何でそんな涼しい顔なんだ?
お前だって船は初めてだろうがっ」
「ふっ、この世で俺に苦手なものはない」
(ふふっ、少し離れてだだけなのに、この二人の言い合い、懐かしいな…)
「貴様ら、言い争うのもいい加減にしろ」
「御館様っ!」
威厳たっぷりの低く落ち着いたよく透る声に、一瞬で周りの空気がピリッと張り詰めたのを肌で感じる。
「信長様っ!」
逢いたくて…逢いたくて堪らなかった人が目の前にいる。
逞しいその腕の中に今すぐ飛び込みたい
……でも、私にその資格があるのだろうか…
心に僅かな不安を感じていた私の躊躇いを吹き飛ばすように、優しく、且つ力強い声が掛けられる。
「朱里っ!来いっ!」
その声に、弾かれたように駆け出して、大きく開かれた腕の中へ飛び込んだ。
「信長様っ、信長様っ」
名前を呼ぶことしか出来なくて、背中に回した腕にギュッと力を込めて抱き締める。